アメリカ東海岸に研究留学して1年半。
実験のかたわら、
日本人のグループからは距離を置き、
英語での会話には積極的に参加し、
ラジオや映画を聞いて耳を鍛えてきたつもりです。
おかげで相手の言っていることは‘まぁまぁ’分かるし、
言いたいことは‘それなりに’表現できるし、
日常の生活には困らなくなってきました。
しかし。
最近になって、自分の言うフレーズ、使っているグラマー、話すボキャブラリー、そのどれもが非常に限られた範囲内のものを何度も使いまわしていることを痛感するのです。そしてその応用方法だけがどんどんうまくなっていってしまうような不安があるのです。この閉じられた小さな世界から飛び出す方法はあるのでしょうか?
「小さな世界」と仰っているお気持ち、私にも留学経験がありますのでとてもよくわかります。
その世界の壁をぶちこわすための2つの事柄をご紹介します。
まず1つ目は「イメージ」です。
英語が限られた範囲でしか出てこない、ということは、とても限定された覚え方をしてしまっていることの裏返しということはありませんか?
例えばmakeやgetなどの基本動詞は、とても意味の幅が広いものです。
それに合ったイメージを持っていないと、とてもじゃないですが使いこなせません。
また、基本動詞だけでなく、例えば前置詞や助動詞なども、日本人には難しく感じられるものです。
こういったものに対して、対応する日本語を覚えるといった方法ではなく、そのイメージをきちんと捉え、養っていくことができれば、文字通り英語の世界が広がります。
特に、簡単な動詞と前置詞のイメージを獲得することができれば、英語の表現がどんどん広がります。
この辺のイメージに関して自信がないという方がいらっしゃれば、以下の本をお薦めします。
・ネイティブスピーカーの前置詞
・英文法をこわす〜感覚による再構築
どちらも大西先生によるものですが、マジでお奨めです。
2つ目は「プラグマティックス(語用論)」です。
この言葉自体をご存じ無いかもしれませんが、気にしないで下さい。
念のため、Wikipediaでの解説へのリンクを載せておきます。
プラグマティックスというのは、簡単に説明すると「トータルでの言葉の使い方」ということです。
例えばですが、誰かが「この部屋暑くないですか?」と言った場合、「そうですね、暑いですね。」という返事をして終わり、ということってありえないですよね。
「じゃあ窓を開けましょう。」とか「クーラーをつけましょうか?」とか、(状況次第ですが)そういうやり取りになるのが普通ですよね。
つまり「この部屋暑くないですか?」という発言は、文字通りにはYes-No Questionですが、実際には「窓を開けませんか?」という提案であったり、「クーラーをつけてもらえませんか」というお願いであったり、実際の「意味」は様々なんです。
で、日本語のネイティブであるあなたは、そういう言葉の使い方を自然にしているんですが、英語ではそういう使い方があまりできていません。
こういった言葉の使い方を学べることが、留学の1つの醍醐味だと私は思います。これこそが、生きた言葉の使い方ですよね。
ひとことでプラグマティックスと言っても、とても範囲が広いですので、もう少し他の例も出しておきましょう。
例えば人にものを頼むときの表現で「ちょっとお金を貸して(lend me some money)」で考えてみましょうか。
Please lend me some money.
「少しお金を貸して下さい。」
Can you lend me some money?
「ちょっとお金貸してくれる?」
という言い方から、
Shit! I forgot to bring my wallet. Will you lend me some money?
「しまった!財布忘れた。カネ貸してくれる?」
だとか
I'm really sorry, but could you lend me some money?
「申し訳ないのですが、少々お金を貸していただけませんか?」
とか
I was wondering if you could lend me some money.
「できたら少しお金を貸していただきたいのですが・・・」
のように(訳は適当なので忘れて下さい)、いろんな言い方があるわけです。
限られた表現を繰り返し使っている、ということは、おそらくですけれども、こういった様々な表現の仕方があるということをご存じない可能性が高いですよね。
できれば良い本をご紹介したいのですが、知りません。
というかですね、プラグマティックス自体が言語学でかなり新しい分野ですので、具体的なことまでかみ砕いたような本はあまりないのではないでしょうか。
#ご存じの方、是非教えて下さい。m(_ _)m
一応、言語学としてのプラグマティックスに興味がある方のために原書をご紹介しておきます。
Pragmatics
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?link_code=ur2&camp=247&tag=englishpower-22&creative=1211&path=ASIN/0194372073
入門書です。
Sociolinguistics
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?link_code=ur2&camp=247&tag=englishpower-22&creative=1211&path=ASIN/0140289216
これも入門書。社会言語学という立場から、言語といろいろなもの(例えば社会、性別、国、土地柄、人種)
について語っています。興味深い情報がいっぱいです。
Women, Men and Politeness
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?link_code=ur2&camp=247&tag=englishpower-22&creative=1211&path=ASIN/0582063620
丁寧な表現について書いてあるのですが、とっても興味深いことがたくさん載っています。ちょっと高いですが。
まとまりがありませんが、このようなプラグマティックスを学べることが、留学の大きなメリットの1つです。
是非、「生きた英語」を身につけてきて下さい。
(で、その情報を私にも分けて下さい。笑)