能動態と受動態に関して言えば、英語では能動態の方が普通の言い方です。
受動態は普通ではない表現なのです。
He hit me. (能動態)
I was hit by him. (受動態)
さて、普通でない表現である受動態は、いったいどのような場面で使うのでしょうか。
受動態の使い方にはいくつかパターンがあります。
<受動態の使い方1:行為者をあいまいに>
受動態は、例えば、行為者がわからない場合や、行為者を曖昧にしたい場合に使います。
受け身の場合には、能動態で主語に当たるものは by 〜 で表現できますよね。
でもどこかで聞いたのですが、受け身の文の7〜8割では by 〜 を言わないらしいです。
例えばですが、裁判で弁護士が
Objection, Your Honor!(異議あり!)
と言ったとしたら、裁判長は次のように答えます。
Sustained.(意義を認めます。)
Overruled.(却下します。)
さてこの場合、認めたり却下したりしているのは裁判長(個人)なのでしょうか、それとも裁判所なのでしょうか?
・・というのがわからないから、英語だと受け身で表現するわけです。
日本語だと主語が省略できますので、受動態にする必要がおそらくないんでしょう。
他にも例えば
The airplane was delayed for about 20 minutes because of the bad weather.
(その飛行機は悪天候により約20分遅れた。)
のような言い方をしたとします。
遅れた原因は悪天候なのか、それとも悪天候に負けたパイロット?(笑)
<受動態の使い方2:客観性を持たせる>
It is widely believed that smoking increases the risk of cancer.
(喫煙は癌の発生率を高めると広く信じられている。)
これは日本語でも一緒だと思いますが、受動態にすることで客観性を持たせることができます。
<受動態の使い方3:被害などの強調>
受動態はまた、被害を強調したいような場合にも使います。
例えば「顔を殴られた」場合に(←ほら、日本語だと受け身が普通ですよね)
He hit me in the face.
I was hit in the face.
という2通りの言い方ができます。
前者であれば、He に焦点が当たりますので、「彼」がどういう行動をしたかを伝える文章になります。
それに対して後者のように、被害者である人物を主語の位置に持ってきて受動態の形にすると、被害者に焦点が当たりますので「被害を受けた」ことが強調されるわけです。